今日は、此の方を紹介しよう


日本の黄金時代を築いた一人で、西城・柴田・沼田・小林と中量級の
四羽烏と言われお互いに、ライバル意識を持ってほぼ同時に4人が、
世界の頂点を極めた。西城・柴田はフェザー級、小林・沼田はJrライト
級でボクシングファンを魅了させ素晴らしい選手であった。
沼田 バリエントス バラダレス アマヤ1
カネテ アマヤ2 アルレドンド マルカノ

勝利の瞬間試合の凄さを思わせる


12回、小林の連打に、沼田は力尽きる


沼田 義明×小林 弘
昭和42年12月14日 . Jrライト級
東京・蔵前国技館 . 12回 KO 小林 弘
精密機械”が勝つか、”雑草”が勝つか・・日本人同士による初の世
界タイトルマッチは、対照的な両者の顔合わせとなった。ボクサーとし
てエリート・コースを歩んできた沼田に対し、小林は下積みが長く、幾
度もの挫折を乗り越えて来た選手。試合は、1ラウンドから両者の意
地がぶつかりあう激戦となる。沼田は前半、伸びのある左ジャブと右
ストレートでリードしたが、6回に右フックを顎に食ってダウン。此れで勢
いづいた小林は、12回にも再び右フックのカウンターで沼田を倒しこの
回3度のダウンを奪って念願の王座に就く。「日本人同士でかえって気
が楽だったね。沼田君は左を打った後ガードが下がるから、右クロスを
狙っていた」小林はこう話し、沼田は次の様に振り替える。
初の日本人同士ということで、固くなった。やはり若かったし、精神的
な弱さがあったんでしょう」両者の気質の違いが、其の侭明暗を分けた

小林はバリエントスの長いリーチに苦戦


小林 弘×レネ・バリエントス
昭和43年3月30日 . Jr ライト級
東京 ・ 日本武道館 . 引き分け
小林の初防衛戦は、大苦戦となった。挑戦者のフィリピン人バリエント
スは、サウスポーのファイター。名王者エロルデが失った王座を奪還す
る為、1ラウンドから積極的に打って出る。小林は初防衛戦の緊張か
らか、沼田戦で見せた動きの切れが無い。上体の柔らかい挑戦者を攻
めあぐみ、逆に手元で伸びてくるバリエントスの左ストレートと、右アッ
パーのボディブローに苦しめられる。両者決定打を奪えないままゴング
小林の王座防衛失敗かと思われたが、判定は引き分け。先年フィリピ
ンで会ったバリエントスは、「どっちが勝ったかは、日本のファンが一番
良く知っていた」と、悔しさを隠さなかった。

小林が追い、バラダラスが逃げる


小林 弘×ハイメ・パラダレス
昭和43年10月5日 . Jrライト級
東京 ・ 日本武道館 . 判定 15回 小林 弘
一年前、南米エクアドルに遠征した小林は、パラダレスに判定で敗れ
て居る、今回は、その復讐戦。小林はバリエントス戦の汚名をそそぐ
べく、初回から積極的に打って出る。だが、挑戦者は打ち合いにまるで
応じず、足を使って、逃げるばかり。中盤以降もこの戦法は変わらずあ
まりの不甲斐なさに客席からヤジやブーイングが飛ぶ。10回と12回に
軽いダウンを奪った小林は、大差の判定で2度目の防衛に成功するが
観客は「カネ返せ!」 「史上最低!」と憤懣やるかたない様子だった。

バッティングで出血した小林


小林 弘×アントニオ・アマヤ
昭和44年4月6日 . WBA Jrライト級
東京 ・ 蔵前国技館 . 判定 15回 小林 弘
小林の血みどろの勝利だった。パナマ出身の黒人アマヤは、ゴムま
りのようなフットワークから、良く伸びる左ストレートを放つ。挑戦者の懐
の深さに阻まれて、小林は苦戦したが、左右のショート・フックで徐々
にポイント差を広げた。ハプニングが起きたのは10回。アマヤのバッテ
ィングで小林の左瞼が裂け、鮮血がしたたり落ちる。しかし、小林はト
ランクスを真っ赤に染めながらも前進をやめず、2対1の辛勝で3度目の
防衛に成功した。アマヤは手数とスピードで小林を凌いだがオープンブ
ローが多く、パンチ力に欠けた。

12回、小林が左右フックを連打


小林 弘×カルロス・カネテ
昭和44年11月9日 . WBA Jrライト級
東京 ・ 日大講堂 . 判定 15回 小林 弘
小林が、久々に会心の試合を見せた。カネテは、アルゼンチンから来
た世界一位のテクニシャン。白井がペレスに敗れて以後、日本人はア
ルゼンチンの選手を相手に世界戦で8連敗と分が悪く、この試合でも苦
戦が予想された。しかし、小林は沼田戦以来の好調。アウト・ボクサー
のカネテに右クロスやショート・フックを狙い通りに決め、12回には挑戦
者をリング外に叩き出す。小林はワン・ラウンドも落とす事無く、10ポイ
ント以上の差をつけて4度目の防衛を達成。白井、原田の防衛記録に
並んだ。

小差の判定で日本新記録の5度目の防衛

小林 弘×アントニオ・アマヤ
昭和45年8月23日 WBA Jrライト級
東京 ・ 後楽園ホール . 判定 15回 小林 弘
小林は、世界王座防衛の日本記録を作った。5度目の防衛戦の相手
は、前半大苦戦したアマヤ。今回も長いリーチと変わり身の速さで小林
のカウンター戦法をはぐらかす。王者は前回と同じく左瞼を切ったうえ、
9回にはバッティングで左側頭部から激しく出血。顔の半分を血で染め
ながらも、”雑草”の本領を発揮して後半追い上げ、叉も僅差の判定勝ち
をおさめる。アマヤ陣営は、小林の王座認定証を取り上げて激怒したが
有効打の少なさがわざわいした。小林は26歳の誕生日を、自らの拳で
勝ったのである。

小林の右フックがアルレドンドの顔面に


小林 弘×リカルド・アルレドンド
昭和46年3月4日 . WBA Jrライト級
東京 ・ 日大講堂 判定 15回 小林 弘
メキシカンの挑戦者は、後に浜田剛史にTKO勝ちして世界王座を奪還
したレネ・アルレドンドの実兄。この時まで26連勝中で、「最強の挑戦
者」というふれ込みだった。流石に長身からの左ジャブは正確で伸びが
あり、小林は度々出ばなをくじかれる。だが「ずるさ」で上回る王者はラ
フなインファイトに持ち込み、若いアルレドンドの端正なアウト・ボクシン
グを崩してゆく。14回のピンチを乗り越えた小林は、6連続防衛を成し遂
げ、日本記録を更新した。

9回マルカノ捨て身の右アッパーが決まる


小林 弘×アルフレド・マルカノ
昭和46年7月29日 . WBA Jrライト級
青森 ・ 青森県立体育館 . 10回 アルフレド・マルカノ
ボクシング王国”の一角が早くも崩れだした。前回の防衛戦で強敵
アルレドンドを降した小林は、楽勝ムードが漂っていた。ベネズエラから
きた挑戦者は世界5位、パンチは重いがスピードはない。しかし、以前
から決して許さなかったパンチを、小林は1ラウンドからまともに食って
仕舞う。苦戦の小林は9回、絶好のKOチャンスをつかむ。前半のオーバ
ーペースと40度近い猛暑で疲れた挑戦者にラッシュをかけ、ロープ・ダ
ウンを奪ったのだ。ところが、大きな落とし穴が潜んでいた。一気に試
合を決めようと出たところに、マルカノの捨て身の右アッパーが顎を襲い
小林は前のめりにダウン。立ち上がったものの足が定まらず、更に2度
のダウンを喫した時、コーナーからタオルを投げ込まれた。
小林は、7度の防衛に失敗、4年間保持したベルトをついに失った。
この年、小林が7月、西城が9月、沼田が10月と王国も崩れて行く。

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